---------- 今日は、2016年度インカレチャンピオン、龍谷大学の下田菜都美選手にインタビューをお願いしました。下田選手、よろしくお願いします。
下田菜都美 よろしくお願いします。
---------- まずは、インカレ優勝おめでとうございます。
下田菜都美 ありがとうございます。
---------- 今年のインカレは大会4連覇がかかる西本拳太選手(中央大学・埼玉栄高校卒)が話題の中心でしたが、実は下田選手が3年ぶり2回目の優勝を果たすかにも注目が集まっていました。
下田菜都美 大会の初日に西本君が「下田さん、1年生のときに一緒に優勝したの覚えていますか?」って声を掛けてくれたんです。「もちろん覚えてるよ!」って答えたら「今年も一緒に優勝しましょうね!」って言ってくれて。決勝戦は私の方が先に終わったので、一生懸命応援したのですが…。
[注]西本選手は、決勝戦でファイナル19本で敗れ、準優勝でした。
---------- 下田選手は、1年生で優勝した後、2年生で準優勝、3年生では初戦敗退でした。今年にかける意気込みは強かったのではないですか?
下田菜都美 そうですね。大学に入って力が落ちたとは絶対に言われたくなかったので、意地はありましたね。
---------- ところで、下田選手は来年度から広島ガス(日本リーグ<旧2部リーグ>)で競技を続けられるということですが、「高卒で実業団入り・退社後に大学へ」と進む目的は、「大学で教員免許状を取得して母校の指導者になる」というのが一般的な見方かと思います。ですが、下田選手は実業団チームに戻られます。これまでの経緯を教えていただけますか?
下田菜都美 高校2年生の全国選抜大会の頃に、ルネサス(現・再春館製薬所)を含め複数チームから声を掛けていただきました。以前から「バドミントンを職業にしたい」と思っていたので迷うことなく実業団の道を選びました。ところが社会人になってみて初めて自分の「人としての未熟さ」に気がついて。かなり悩みましたが「もう一度、きちんと勉強し直そう」と決めて、退社して進学することにしました。
---------- ということは、最初から教員免許状は目的ではないということですか?
下田菜都美 まったく違いますね。教職課程も取っていません。
---------- では、もともと卒業後は実業団チームに入り直す予定だったのでしょうか?
下田菜都美 特に卒業後のことは何も考えていませんでした(笑)
---------- 進学先に龍谷大学を選んだ理由は何ですか?
下田菜都美 宮崎(克己)監督です!
---------- 何か縁があったのですか?
下田菜都美 中学生のときに宮崎さんにバドミントンを教わる機会があって、そのときに「指導者としても人としても本当に素晴らしい方だな」と強く感じたので、自分を成長させるには宮崎さんが監督をされている龍谷大学しかないと考えました。
---------- それで、退社して龍谷大学へ進まれたわけですね。
下田菜都美 ですが、退社を決めたタイミングが遅すぎて、大学の入試が終わってしまっていたので一浪しました。大学の近くにアパートを借りて「午前中はアルバイトをして午後は大学で練習」という1年間を送りました。ありがたいことに龍谷大学の推薦をいただけたので、しっかり練習ができました。
---------- そして、いよいよインカレに向けた時間がスタートしたのですね。
下田菜都美 ところが、1年生の関西選手権(関西学生バドミントン連盟主催の個人戦・6月)の杉野文保選手(龍谷大学・園田学園高校卒)との準決勝の試合中にいきなり腕に力が入らなくなって。クリアーは飛ばないし、スマッシュも遅いし。それでも、なんとか続けようとしたのですが、その後でラケットを落としてしまって、最後には倒れてしまって。結局、救急車で運ばれました。それから京都に戻り、早く復帰することを目指してしばらく静養していたのですが、監督から「また打ちたいと思えるまでは、ゆっくり休みなさい。それまでは体育館にも来なくていいからね」と声を掛けていただけたので、2ヶ月近くバドミントンから離れて生活をしました。
---------- ということは、西日本インカレ(全日本学生バドミントン連盟主催・8月)は?
下田菜都美 ぶっつけ本番です。
---------- 順風満帆、予定通りに最初のインカレを獲ったというわけではなかったのですね。
下田菜都美 まったく違いましたね。原因はよく分からないのですが、翌年もその翌年も関西選手権は私にとっては恐い場所でした。
---------- それを乗り越えて、今年は学生タイトルを全て獲得。そして、実業団の戦いに戻ることになるわけですが、ここまでを振り返って「回り道をした」という思いはありますか?
下田菜都美 以前はそのように思ったこともありました。高校から大学へ行っていれば良かったのかなとか。ですが、ルネサスでの1年間で、自分に身についているものと欠けているものがはっきり分かったおかげで、大学で学び直すという道を見つけることができたわけですし、大学での4年間で本当に成長できたと実感できていますので、これまでの道のりは自分にとって全て必要なものだったんだと、今は自信を持って言えます!
---------- バドミントンをすること自体を辛く感じたり、やめようと考えたことはありませんか?
下田菜都美 それは無いですね。
---------- バドミントンに自信を持てたきっかけは何ですか?
下田菜都美 高校2年の全国選抜(団体戦準優勝・シングルス第3位)です!
---------- そこは「全国私学大会です!」と言ってほしかったです。
下田菜都美 あ…。たしか…、優勝しましたよね?
---------- 全国私学大会での下田選手は、1年生(第13回・長野大会)で優勝、2年生(第14回・神奈川大会)で4位という成績で、いずれもチームの中心メンバーとして活躍されました。
下田菜都美 特に、1年生のときの印象が強いですね。
---------- 福万尚子選手(再春館製薬所)とのコンビですね。
下田菜都美 はい。福万先輩は本当に強かったです。
---------- 福万・下田ペアは全ての試合で第1ダブルスまたは第2ダブルスで出場して7戦全勝。さらに、第2シングルスと第3シングルスは必ず福万選手と下田選手がエントリーされていました。
下田菜都美 ものすごくたくさん試合した記憶がありますね。
---------- 翌年は新キャプテンとして臨んだ大会でした。
下田菜都美 なぜ指名されたのか理解できなかったです。絶対に向いていないので。
---------- 最初はみんな同じことを言います。すぐに慣れたでしょ?
下田菜都美 実はキャプテンになった後でチーム内で大きな問題が起こりまして、チームが二分されてしまいかねないような事態になりました。それを収めるのにずいぶんと苦労しましたが、みんなのおかげで無事にまとまることができて、全国選抜大会につながりました。ですから、大会で結果を出せたことが嬉しかったというのもありますが、そこに至る過程が非常に濃かったので、自分にとって大きなきっかけとなっています。
---------- 高校で大変な苦労を経験して、社会人1年目に大きな壁にぶち当たって、大学1年生で倒れて、その後もその恐怖心と闘って。ドキュメンタリー番組が作れそうですね。
下田菜都美 あらためて並べて言われてみると、大変なキャリアのような気もしますが。でも、その時々で支えてくれる人が必ず周りにいてくれたので、おかげで乗り越えてこられましたし、そのような経験の一つ一つを自分の糧にできているんだと思います。いくら感謝しても足りません。
---------- 大学のプロフィールにも「座右の銘:感謝」と書かれていますね。
下田菜都美 感謝することの大切さは母から教わりました。
---------- それでは今後のことを聞かせてください。今、どうしても勝ちたい選手は誰ですか?
下田菜都美 鈴木温子選手(ヨネックス・関東第一高校卒)です。ファイナルまでいっても必ず勝ちきられてしまうんです…。
---------- 今後は対戦する機会が増えるでしょう。最後に、母校の後輩たちへメッセージをお願いします。
下田菜都美 強い大阪を取り戻してください!
---------- 今年(第21回・神奈川大会)は女子で四天王寺高校が準優勝、下田選手の母校のアナン学園高校が第6位という好成績でした。今後に大いに期待が持てそうですね。今日は本当にありがとうございました。新天地でのご活躍を期待しています。
下田菜都美 もっともっと強くなるために広島で頑張ります。ありがとうございました。
<2016年12月16日:京都府京都市>
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